第20章 雲の上の存在【及川徹.2019HPB】
第二希望で受けたこの高校
一年の初めの方は分からないことも多かったけど、一年二年と過ごすうちに高校生活が如何に大変で楽しいものか身にしみて実感した。
テストは赤点を死ぬ気で回避しないと後々面倒だし、授業のペースは恐ろしく早いし、先生の出す課題の量は多いし。
でも、文化祭は楽しいし、体育祭は本気になって応援するし、毎日どうでもいいことで笑うように日々が楽しくて。
そんな二年間を過ごし、大学受験を意識し始めた三年の夏。
「はぁ!明日から夏休みですねぇ!」
そう言ってグッっと背伸びをする友達
「ま、夏課外があるけどね」
「……夏休みってなんだっけ…」
そう返すと友達は悟りを開いたように真顔になる
夏休みだろうと三年は一限から七限まで授業があるし、公務員試験を受ける人は死に物狂いで勉強している。
本当に、夏休みってなんだっけ?と疑問に思ってしまう
「今日19でしょ~?明日明後日休みで、それから一週間?……はっ、もう普通に学校じゃねぇか!」
「ゆな、私たちに夏休みはない無いらしいよ」
それは、今日の終業式で校長先生が言っていた事だ
せっかくの夏休み、受験生の私たちにとって勉強漬けの日々だろう
そんなことを喋っていた時
友達が窓の外を見て声を上げた
「うわっ、王子様凄いことになってる、、、そういや明日誕生日なのか、納得」
「ほんとだ、後輩に囲まれてる」
窓の外には後輩たちに囲まれ、誕生日プレゼントを受け取ってる及川君が居た。
私の友達はこの学年一のイケメン、及川徹のことを王子様と呼んでいる。彼女曰く、うちの男子の制服をあそこまで着こなすのはもう王子様だろ、らしい。
まぁ、分からんでもない
白のブレザーとか中々着こなせない
それに顔は良いし、強豪男バレのキャプテン
おまけに理系特進(6組)で頭もいい
明るいし口も上手だから、当たり前のように一群の中心人物だ
言ってしまえば完璧超人、高嶺の花、雲の上の人
私なんて、同じクラスのなったことないし、ましてや話すなんて夢のまた夢
誕生日なんて私には関係ない話
そう思いながら窓の外を見るのをやめた