第19章 似たもの同士【矢巾秀】企画作品
そう言う矢巾君は何処か苦しいような、悲しいような顔をみせた
そして思わず"分かる"と気持ちよりも先に言葉が口走った
そこからは自分でも驚くくらいにスラスラと言葉が出る
「私もさ、貴希先輩に似たような事言われた。でも、私には貴希先輩みたいなセンスは無いし、才能もない。......先輩達が輝けば輝くほど苦しくなる。」
そこまで言ってハッとする
まるで先輩達が活躍するのが嫌みたいな言い方じゃないか
別にそんなことは思ってない
純粋に活躍するのを見て尊敬するし、頑張って欲しい。
「...いや、でも、先輩達には頑張って欲しいよ!?」
慌てて、そう付け加える
矢巾「....ははっ.....いや、分かるよ。その気持ち....。スゲー分かる。」
彼はそう言って笑う
それに釣られて私も"だよね"と言って笑った
少しだけ、気持ちが楽になった気がした
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あれから、矢巾と話す機会が増えた
お互いセッターとしての話
先輩の話、サーブについて
色々話していくうちに矢巾のセッターとしての技術も相当だと知った。でも、先輩からの圧は私となんら変わらなかった
矢巾「あーあ...ミニゲームの時ってキツイよなぁ」
放課後、教室から体育館に向かっている途中でたまたま会った。そして、矢巾がそう言ってため息をつく
「...なんか、自分の無力さを身にしみて感じるよね」
矢巾「本当にそれな」
ミニゲームの時は、大体スタメンVSベンチで組まれる
私や矢巾はベンチのセッターとして、及川先輩や貴希先輩と当たるのだ
まぁ、これが本当に辛い。
「あ、じゃあ、ここで」
矢巾「おー、頑張れよー」
「お互いね~」
女子の体育館に着いたので私は矢巾にお別れを言ってその場を後にした