第19章 似たもの同士【矢巾秀】企画作品
「あ、ごめん......」
私は反射的に謝る
鞄を見ると、チャックが開いていた
私、そこまで余裕無かったのか...
「ありがと...気付かなかった...」
?「いや、大丈夫。それよりお前、確か女バレの山田だよな」
その男子はそう言って首を傾げる
「あ、うん。......あーと...ごめん、顔は分かるんだけど、名前が出てこない...」
私は考えたものの、出てこない名前を問いかける
すると、彼は少し笑いながら答えてくれた
矢巾「俺、矢巾秀。1年の男バレ」
男バレと聞いてやっと思い出す
そういや、何度か見たことある
男バレと女バレは基本体育館も違うし、関わることはほとんどない。クラスが違えば尚更だ
私は"よろしく"と一言言う。
すると、矢巾君がこう言った
矢巾「お前、なんか思い詰めた感じだったけど...大丈夫?」
「え...そうだったかな...?」
そう言う矢巾君は心配そうな顔でこちらを見る
やっぱりそんなに切羽詰まった表情だったのか...と思いながらも、私はとぼけてみせた
矢巾君は"ふーん..."と言いながらも話を続けた
矢巾「...俺さ~、セッターなんだけど、及川さんの"後釜"だなって色んな人から言われてんだ...」
「...!」
その一言で分かる。
私と同じ状況に立たされている。と__
表情や声色、間の開け方でその言葉が自慢でない事を物語っている
矢巾「上手って言われてるんだとは思うよ。でも...なんだろうな~...気が滅入るって言うか.....あの人の後を任されるのが俺でいいのかな?......って、思う。」