第19章 似たもの同士【矢巾秀】企画作品
そこには男バレの新キャプテンで、イケメンと名高い及川先輩が立っていた
「......は?」
私は思わず気の抜けた声が漏れる
及川「だーかーらー!アドバイス!1人じゃどう変えればいいのか分からないでしょ?」
「は、はぁ...ありがとうございます。」
私はよく分からないまま、取り敢えず返事だけはしておいた
及川「君、山田ちゃんでしょ?話は聞いてる」
「そ、そうですけど…」
私は落ちたボールを拾いながら、何故私の事などを知ってるのか疑問に思った
及川「貴希ちゃんが言ってたんだよ。私の次は君だってね。凄いじゃん」
そう言って笑い掛けてくれる及川先輩
私達は黙々とボールをカゴに入れる
及川先輩に悪気がないのは分かってる。きっと善意で言っているのだろう。....でも、今の私は彼のその言葉を勝手にねじ曲げてしまう。
「......ありがとうございます。...まぁ、私は先輩たちとは違いますけど...。あ、そろそろ時間なので帰りますね。さようなら」
最後のボールをカゴに入れ終え、隅に置いていたカバンをとって外に出る
及川「あっ、ちょっ!!」
及川先輩の声を背に私は靴に履き替え、急いで帰り道を歩いた
何故か分からないが、そうでもしないと涙が溢れそうだった。なにかちぎれそうだった
少し早歩きをしながら頭の中に色々な感情が渦巻く
自分にはセンスも無ければ才能もないという"劣等感"
及川先輩の言葉を素直に聞けなかった自分への"怒り"
逆に、褒められて"嬉しい"という気持ち
そんな事をグルグルと考えていると、後ろから"おいッ!"と声がした
「......え?」
ハッとして声のした方向に顔を向けると、身長180位の男子が立っていた。顔は知っているが名前が出てこない
誰だっけ……
?「.....サポーター落としたぞ」
そう言う彼は私のサポーターを手に持っていた