第14章 我が儘な彼女(豊臣秀吉/甘め)
隣では迦羅が小さな寝息を立てながら、安心したように眠っている。
好きな女と布団を共にしてるって言うのに。
「…安心されても困るんだけどな」
傍で幸せそうな迦羅の顔を見て、男としての本音がこぼれた。
でも、こうして二人で居る時間が出来たことに、俺は喜んでいた。
眠る迦羅の額に軽い口付けを落とし、心地よい温もりに抱かれて俺も眠りに落ちていった。
ー翌朝、まだ眠っている迦羅を起こさないよう布団から出て文机に向かい、仕事を始める。
墨を擦る音で、迦羅が目覚めた。
「あ、おはよう秀吉さん」
「起こしたか。悪いな」
「今日は御殿でお仕事なの?」
「ああ、しばらくな」
昨日信長様には迦羅の怪我が治るまでの間、と言って御殿で仕事をすると許可をもらってある。
書状をしたためる手元を見ながら、迦羅は複雑そうな顔をした。
ああそうか。
俺がお前の面倒をみるためわざわざ御殿で仕事することに、きっと申し訳ないとでも思ってるんだな。
「城じゃなくても、書き物はできるだろう」
「うん…」
返事はするがやはり顔が晴れない。
「いい加減俺の世話焼きに慣れろ」
「でも、秀吉さんが仕事してるのに、私は横で寝てるなんて…」
普段なら迦羅も掃除や針子
その他も色々な城内の仕事をしている。
自分だけ何もせずにいるのは嫌なんだろう。
だが怪我が治るまではダメだ。
放っておけば無理をするに決まってる。
一旦筆を置き、迦羅の横に座る。
「足見せてみろ。包帯を替える」
特に抵抗もせず、迦羅は素直に足を伸ばして着物の裾を払う。包帯を外すと、まだ幾分腫れが残っているが、だいぶ引いた。
「もう少しかかりそうだな、治るのは」
「うん」
「まだ少し痛むか?」
「うん」
「無理して動くなよ」
「うん」
何だ?さっきから気のない返事ばかりだ。
軟膏を塗り、新しい包帯を巻き終えると、迦羅の顔を見た。
「秀吉さんは、私のこと面倒だと思わないの?」
は?何を言ってるんだよ。
お前のこと面倒だなんて思うわけないだろう。
少しムッとした表情で迦羅を見据えた。