第14章 我が儘な彼女(豊臣秀吉/甘め)
「何で?」
険しい顔でそう聞く秀吉さんは、怒ってるのかな…
「だって、こんなに面倒ばかりかけてたら…また、世話焼かれるだけの、妹に戻ってしまいそうで…」
心の中に浮き出てきた不安を素直に伝える。
「勝手に怪我して、また面倒みてもらって…。でも、それでも秀吉さんと居られることが嬉しいの。悪いと思いながら、私本当は嬉しいと思ってるの」
すると、秀吉さんの顔からふっと険しさが抜け、いつもの優しい微笑みに戻った。
「馬鹿だな、お前は」
頭を撫でられて、気持ちが落ち着いていく。
「面倒だなんて思ってない。それに、今更妹なんかに戻られたんじゃ俺の身がもたないだろ」
ん?どういう意味?
わからない顔をしていると、頭を撫でていた秀吉さんの手が頬に滑り下りて来て私を捕らえる。
唇の柔らかな感触と、押し入れられた舌で、言葉の意味を理解させられている。
「んっ、…んん…っ」
長く深い口付けに息が出来なくなり、秀吉さんの胸元を叩く。
ようやく離された唇。
鼻先が触れ合う距離で、囁かれた。
「妹には、こういうこと出来ないからな」
私の頬は熱を上げて真っ赤になっていくのがわかる。
「俺に遠慮するな。もっと我が儘になっていいんだぞ」
「…本当に?」
「ああ、本当だ」
「じゃあ、もっと…」
素直に口付けをせがむと秀吉さんはそれに応えてくれる。
優しく甘やかすような口付けが、身も心も溶かしてしまう。
口付けを解いた秀吉さんは少し頬を染めて、色っぽい目をしている。
腰を抱き寄せられて、更に身体が密着した。
「それから、次は?」
まるで意地悪するみたいなふうだけど、嫌じゃない。
「今度はもっともっと…秀吉さんが欲しい」
何故か恥ずかしいなんて気持ちはなくて、口をついて出た。
何もかもを秀吉さんが受け止めてくれるとわかったから。
返事をしない秀吉さんの首に両手を回し催促する。
「ダメなの?」
「そんなわけないだろ」
そう言う秀吉さんに優しくゆっくりと布団へと押し倒される。
「誘ったんだから、覚悟しろ」
見下ろす秀吉さんが一瞬意地悪な笑顔を浮かべた。
まだ陽が高い昼間、私の我が儘は続いている。
完