第14章 我が儘な彼女(豊臣秀吉/甘め)
「迦羅、入るからね」
家康が調合した軟膏を持ってきてくれた。
「どうもありがとう。使わせてもらうね」
笑顔でお礼を言うが、家康は複雑な顔をしている。
不思議そうに見ていると、
「あんた、それ自分で怪我したの?」
「そう。不注意で勝手に捻挫しちゃったんだけど…」
「秀吉さんは俺のせいだって聞かないんでしょ」
家康はすべて見透かしているようだ。
「たまには甘えてみてもいいんじゃない」
意外な言葉に、返答を忘れてしまった。
「だから、たまには心配させるくらいさせておけばいいんじゃない。あの人はそれも仕事みたいなもんでしょ」
私のドジに嫌味を言っているのか
秀吉さんの頑固な部分に嫌味を言っているのか、わからなかったけれど。
家康は私の右の足首に軟膏を塗ると、包帯を巻いた。
「あ、ごめんね、手当てまでさせちゃって」
「次からは自分でやりなよ。あと、あんたも気遣いすぎ」
「えっ?」
「…二人揃ってこれだから堪んない」
その時、秀吉さんが戻ってきた。
「迦羅、今から俺の御殿に行くぞ」
そう言ってまた私を抱きあげる。
「えっ、どうして?」
「なんでもいいから行くぞ」
有無を言わさず秀吉さんにしがみつく。
「…見てらんない」
家康の呟きを背後に聞きながら、二人で部屋を出た。