第13章 夢にまで見る君(伊達政宗/裏)
安土城の広間に集まった一同は、信長の言葉に耳を傾けている。
「東方の領地の内情視察だ。秀吉、お前が行け」
「はっ、承知しました」
織田領内のことは、何かあればすぐに報せが来る。
だが時々こうして、こちらから内情の確認へ行くこともある。
今回はまさにその話だった。
「それから、迦羅。貴様も秀吉と共に行け」
「え、私もですか?」
意外な指名に驚いた声をあげる。
「領地の奴らが貴様に会いたがっているそうだ」
まことのことなのだろうが、信長は愉快そうに笑う。
「はい、わかりました」
信長の命に迦羅は素直に応じる。
だが、気が気ではないのが政宗だった。
内情視察と言えども数日はかかる。
その間、迦羅は秀吉と二人、行動を共にするのだ。
予期せぬ事態に顔をしかめていると、信長がそれに気付く。
「政宗、すべて顔に出ているぞ。言いたいことはわかるが、今回は秀吉が適任だ」
そう言われてはどうすることも出来ない。
が、やはりやり切れない。
むっとした顔で秀吉を見ると、秀吉のほうも困った顔をした。
話が終わり、広間を出たところで政宗が秀吉に声をかける。
「大丈夫なんだろうな?」
主語がない。
しかし秀吉は政宗の意を受け取った。
「そんな目で俺を見るなよ。何の心配がある」
半ば呆れたような返答であったが、信用するしかない。
政宗は心底信長を恨んだ。