第12章 侵略する刃(徳川家康/微甘)
翌日から、何だか家康の態度がおかしいことに、私は気付いていた。
昨日買い物から戻ったあと、勝手に一人で行ってしまったことを謝りに行ったけれど…
「別に、あんたの勝手だから」
と素っ気ない返事をされて、それっきり。
今日も何度かすれ違ったけれど、何だか避けられているような気がした。天邪鬼な家康のことだから、勝手に買い物に行ったのがまずかったのかな、とも思ったけれど…
これだけあからさまに避けられる理由ではないと思う。
それ以外にも色々振り返ってみても、思いあたる節はない。
この時はまさか、佐助くんとの接触を見られていたなんて、思いもしなかった。
ある日、私は信長様に呼ばれて軍議の場にいた。
そこで、上杉・武田軍との戦が近いことを告げられる。
やっぱり…佐助くんの言うことは間違いではなかった。
戦がまた、始まる。
そんな事を考えていると、ふと家康と目が合う。
家康は、ひどく訝しげな目で私を見ていた。
数秒でふいっと目を逸らされる。
何なの…?
すると
「今回の戦、迦羅も連れて行きますよね?」
家康がそんなことを言う。今までにはないことだった。
信長様は一瞬驚いたような顔をしたが
「そうだな、幸運をもたらしてもらおう」
と、話にのった。
信長様には今まで何度か戦場に連れて行かれ、私は危険な目にも遭った。だから、戦場は女の行く所じゃない、家康はそう言っていたのに…。
今は信長様に来いと言われることに不思議と恐怖は感じていないけれど、家康が何を考えているのか…それが怖かった。