第11章 今宵桜の木の下で(織田信長/甘め)
六日が過ぎ、安土中の桜の木が薄紅色の花びらを咲かせていた。
明日にもなれば最早満開になるだろう。
迦羅の望みを叶えるべく、広間に皆を集めた。
「明日は大事な用がある。皆、仕事はするな」
そう告げると一同は呆気にとられた顔をしている。
ああ、言い方が悪かったか。
「仕事を置いてでも、重要なことなのですか?」
秀吉が問うので頷いてやる。
「明日一日働かぬぶん、明後日にまとめて終わらせろ」
「言ってることが無茶苦茶ですけど」
まあ確かにそうだな。
「それで、大事な用と言うのは?」
「明日は、花見をする」
キョトンとしているが有無は言わせぬぞ。
機を逃せば花見は出来ん。
そうなれば迦羅も残念に思うだろう。
口を開いたのは政宗だった。
「信長様の命とあっては仕方がない」
「そろそろ満開ですからね、一興でしょう」
三成ものる。
そうして、明日の花見が決まった。