第9章 嫉妬の行方(真田幸村/微裏)
翌日も俺はたくさんの仕事を抱えていた。
次々と片付けていく。今日は早く迦羅のところへ戻りたい。
ふと昨日の迦羅と佐助の姿を思い出す。
ほんと、仲いいんだな、あの二人。
もともと佐助が迦羅の面倒を見てたんだしな、当然か。
でも、何か俺はモヤモヤしてる。
楽しそうにしてる二人が、気に入らないのか?
いや、佐助はいい奴だ。良くわかってる。何の心配もいらない。
無意識に自分に言い聞かせていた。
仕事がひと段落した頃、一旦迦羅の顔を見ようと部屋へ行ったが、居なかった。
姿を探してキョロキョロしていると、庭に居た家臣の一人がやって来る。
「迦羅様でしたら、先程城下へ行くと言っていましたよ」
「そうか、ありがとな」
無性に迦羅の顔が見たくなり、城下へ出た。
賑わっている町中を歩いていると、茶屋の前が騒がしいことに気付いて足を止めた。
「いいじゃねーか、ちょっと遊ぶだけだって」
「そうそう。何もしやしねぇよー」
明らかな下心を顔に出したような男二人が、女に言い寄っているようだ。くだらない男が居るもんだ。
「やめて下さいっ、困ります!」
強引に腕を掴まれた女が声をあげるがどうやら聞き覚えがある…
迦羅じゃねぇか!?
堪らず駆け出したその時…
「か弱い女性を無理矢理に連れて行こうなどと」
迦羅の前に立ちはだかったのは、どこからか現れた佐助だ。
「これは誘拐、及び傷害罪に問われますね。間違いなく起訴される案件です」
「何をごちゃごちゃと!殺すぞ!」
「おや、脅迫罪も追加されました。罪を重ねるとは愚かな。裁判ともなれば膨大な資金と優秀な弁護士が必要に…」
訳のわからないことを言い続ける佐助に、男達は呆れかえり、その場に唾を吐き捨てて去って行った。
「佐助くん、ありがとう」
「いえ、無事で何より」
離れた場所から二人の姿を見た俺は、のこのこと出て行くことも出来ずに城へ戻った。
残っていた仕事に没頭する。
今は迦羅のことも、佐助のことも考えたくなかった。