第9章 嫉妬の行方(真田幸村/微裏)
その日、幸村は家臣達との会議に向かった。
部屋の襖を開け、何となく庭を眺めていると突然目の前に佐助くんが現れた。
「っひゃあっ!」
あまりにビックリして思わず身体がのけ反る。
倒れかけた瞬間、佐助くんがパッと私の腕を掴んで支える。
「思いのほか驚かせてしまったね」
「もうっ!たまには普通に出てきてよ!」
驚きと同時に笑いが込み上げる。
「どうも普段の忍びの習性が」
と、佐助くんも笑っている。
いつもこうだ。
幸村と離れて、私がぽつんと一人で居ると、佐助くんがひょっこりと現れては私の心を和ませる。
今日も陽が射す縁側で二人でお茶を飲み、話をする。
「佐助くんは、謙信様が心配にならないの?」
「俺の代わりに謙信様のお守りをする人が気の毒だけど」
確かに、と思った。
刀を抜いて追いかけ回されてる人が居ると思ったら、それがまたおかしくて。
幸村の帰りを待ちながら、佐助くんと笑い合った。
そんな私達の様子を陰で見つめる、幸村には気付かずに…。
「はぁ、今日は幸村遅いな…」
佐助くんとひとしきり話したあと、佐助くんは忍びの勉強があると言って帰った。
会議が長引いているのかな。
幸村も、人の上に立つ立場だし、色々あるよね。心配いらないと言い聞かせ、縫い物を始めた。
外は綺麗な月が出て、辺りは月灯りに包まれていた。
まだ、幸村は帰って来ない。
仕事だとわかってはいるけれど、離れている時間はやっぱり…
寂しさを感じていると襖が開き、幸村が帰って来た。
「遅くなった」
「お帰りなさい!」
やっと顔を見られた嬉しさで満面の笑みになる。
でも幸村は、いそいそと奥へ行き部屋着に着替える。
…幸村?
「今日は疲れたんだ。寝るぞ」
そう言って私の腕をグッと掴み、布団へ引っ張り込む。
何か、いつもの幸村と違う。
肩を並べて寝ていた。それにも寂しさを感じた。
でも、疲れているんだもんね。
ゆっくり休ませてあげなくちゃ。
おやすみ、と心の中で呟き、私も眠りについた。
迦羅が寝入ったのを確認すると、幸村はパチリと目を開けた。そっと首だけを動かして、その横顔を眺める。
「…かわい」
呟くと、迦羅に触れたい衝動を抑え、自らも眠りについた。