第9章 嫉妬の行方(真田幸村/微裏)
ようやく仕事が終わったのは真夜中になってからだった。
部屋へ帰ると、迦羅は待ちくたびれたのか、布団の中で丸くなっている。
着替えて迦羅のいる布団に潜り込んだ。
迦羅の熱で布団の中は温かい。
後ろから力強く自分へ抱き寄せると、迦羅が目を覚ました。
「ん、幸村…お帰りなさい」
首だけを振り向かせ、眠たそうな顔で笑顔を見せる。
身体に伝わる迦羅の温もりが、抑えていた心を弾けさせた。
力任せに迦羅を仰向かせ、組み伏せる。
「幸村?どうし…」
言い終えないうちに唇を塞ぐ。お前は、俺のものだー。
「…っあ、んふっ…」
隙間から漏れる吐息さえも奪いたい。
唇を離し、赤く染まった顔を見下ろす。
口付けだけで蕩けたような目が、俺を更に掻き立てた。
その身体を抱き起こして膝に座らせるように向き合う。
間近に迫る俺に、迦羅の顔はますます染まる。
「俺だけを見ろよ」
「今更何言って…」
素直に返事をしない迦羅に少し腹が立った。
着物を肩から外し、首筋から口付け、背中から腰まで手のひらを這わせていく。
「あぁ…っあ、ゆ、幸村っ」
身体をピクリとさせながら、よじる。
目の前で露わになった滑らかな胸に舌を這わせる。
そのまま迦羅を見上げると、降参したような潤んだ目と合った。
「返事、しないの?」
まだ、さっきの返事を聞いてない。
「俺は、お前じゃねぇとだめなんだよ」
素直な言葉がすらりと出てくる。
こんなに愛してる。こんなに、欲しい。
「私が愛してるのは…幸村だけだよ」
熱に犯された嘘のない瞳に胸が貫かれる。
「幸村が大好きなの。どうしようもないくらい、大好き」
俺の首にぎゅっと腕を回してしがみつく。
「照れんなよ」
「…無理」
俺も答えるように、迦羅の熱い身体を抱き締め返す。
「ほら、こっち向けって」
無理矢理顔を向かい合わせ、どちらともなく口付ける。
それから疲れ果てるまで、お互いの体温を確かめ合った。
ーこんなに愛されてんのに
嫉妬するなんて、馬鹿だったな。
でも俺のほうがずっと、ずっと、迦羅を愛してる。
完