第9章 嫉妬の行方(真田幸村/微裏)
夜も明けきらない頃、妙な胸苦しさで目を覚ました。
瞼を上げると目の前には幸村の寝顔。
私の額に、幸村の顎があたっている。
背中に回された片腕が、これでもかと言う程に私の身体を抱き寄せていた。
チラ、と顔をあげるも、幸村は気持ち良さそうに寝息を立てている。あぁ、幸せってこう言うことなんだなって…。
私も幸村の背中に片腕を回して、胸元に顔を埋める。
多少の息苦しさも、大好きの証し。
するとその時、幸村がこちらに向かって寝返りをうつ。
半ば下敷き状態の私は更に密着した身体が熱を上げていくのがわかった。
足が絡まり、幸村の腕は私の胸元のいいところに置かれている。
幸村は相変わらず寝息を立てているが、その吐息が首筋にあたる度に鼓動が早くなっていくようだった。
「もぅっ…」
人のドキドキも知らないで…。
私は少し身じろぎして体勢を変えた。
そっと、幸村の頭から首筋を撫でてみる。
なんて格好いいんだろう。
憎まれ口を叩くくせに、寝顔はこんなに可愛くて。
こんなに、大好きなの。
自分だけが起きてしまったことを残念に思った。
首筋を撫でた手を、そのまま幸村の硬い胸元に滑らせた。
あったかい…
トクトクしてる…
と、次の瞬間、掴まれた手首が無造作に向こうへ押さえつけられた。
顔を赤くした幸村が、私を見下ろす。
「寝込みを襲うんじゃねーよ」
「なっ、襲ってなんかいないでしょう!?」
急に恥ずかしくなって幸村の視線から逃げた。
耳元に降りてきた唇が、熱い吐息をかける。
「そんなに俺に触れたかったの?」
意地悪するように、囁く。
悔しいけど…その通りで、幸村に視線を戻してその目を見つめた。
「先に目が覚めちゃったから、何となく寂しくて…」
「そういうの、堪んないんだけど」
言い終えないうちに口付けが降ってくる。
だんだん深く、苦しいくらいに。
唇が離れると、お互いが照れ、笑い合う。
そうしているうちに、朝陽が昇り、夜が明けた。