第8章 迷走する恋情(織田信長/裏)
二日後、制圧に出ていた織田軍が帰還した。
私は、この間の秀吉さんの話を聞き、信長様に素直な気持ちを打ち明けてみようと思っていた。
城へ戻ってきたあとも、留守の間の報告を受けたり、残務をしたりと、なかなか天主へは帰って来なかった。
夜中も過ぎ、私は先に布団に入りウトウトしてしまった。
眠気が襲ってきた時、布団をめくり、帰ってきた信長様が隣に横になる。
「お帰りなさい…」
「ああ、ただいま」
私は信長様に話をしようとしたけれど、疲れたと一言残し、私に背を向けて先に眠ってしまった。
私の何処に触れてくれるでもなく…。
やはりこの間のことが、信長様を、傷付けたのだろうか。
そしてそんなことが何日も続いた。
同じ布団で寝てはいるが、肌の触れ合いはない。
自らが一度拒絶してしまった手前、触れてほしいとは、とても言えなかった。
こんなに近くに居るのに、触れられる距離に居るのに…
こんなに、信長様に抱かれたいと思う自分が居るのに…
私は我が儘な自分の心に、嫌気がさしていた。