第8章 迷走する恋情(織田信長/裏)
帰ってからというもの、迦羅の肌に触れない日を、すでに七日過ごした。
共に布団で寝て、僅かに触れるのは着物だけ。
その距離がもどかしい。
迦羅はまだ、俺を拒絶するのだろうか?
俺に触れたいとは思わないのだろうか?
天主の縁に座り、淡い月灯りを眺めては、そんなことを考えながら酒を呑んでいた。
しばらくして、湯浴みから迦羅が戻ってくる。
俺は無意識のうちに、隣へ呼んでいた。
「貴様も呑め」
差し出すと、迦羅は素直に呑んだ。
隣に座る迦羅からは、温まった身体の熱と、見えない色香が漂っている。もう、我慢の限界か…
そう思った時だった。
迦羅が俺の手をとり、手の甲にその柔らかい唇を押し当てた。
久しぶりに直接感じた温もりが、一気に流れ込む。
顔を上げた迦羅は、恥ずかしさ、愛しさ、そして…俺が欲しいとその目で訴えた。
迦羅が勢いよく身体を預けてきて首に腕を回す。
「本当はずっと…信長様に触れられたかったの」
「だが、一度貴様は俺を拒んだ」
根に持つように言ってやる。
「信長様に抱かれる度に…私は、もっと信長様が欲しいと…欲張りになるんです」
初めて聞く迦羅の言葉に、胸が焼け付くようになる。
「信長様がくれるものが、あまりに気持ち良くて…このままじゃ、おかしくなってしまうんじゃないかと…」
一体何を考えている。
そんな言葉だけで、俺はすでにおかしくなりそうだというのに。
迦羅の身体に腕を回し、ぎゅーっと力一杯に抱く。
「あっ…痛いです、信長様…」
片手で顎をすくい、こちらへ向かせる。
頬を赤く染め、艶っぽい顔が堪らなく愛おしい。
思うがままに口付ける。
唇を割り舌を絡め取り、角度を変えながら何度も何度も。
「んっ、ふ…っ」
苦しそうな吐息が漏れ、一旦唇を離す。
「…信長様、もっと、たくさん、抱いて下さい…」
耳元で囁かれる迦羅の言葉は、俺の理性を何処かへやってしまう。
軽々と迦羅の身体を抱き上げ、整えられた布団に下ろす。
今宵見下ろす迦羅の姿は、見たことのない程に美しい。
初めてこの俺を、自ら欲しいと言った。
この女はどこまで、俺のすべてを狂わせるのだー。