第84章 お菓子な恋愛模様(真田幸村/甘め)
「どれ、俺のは何だろうな」
先ず、楽しそうな信玄様が紙を広げる。
「婚姻——時期尚早。…成る程、俺はまだ姫の愛を得られていないから仕方がないな」
「おい。いつまで言ってんだよ」
ニコリと私を見る信玄様を幸村が睨み付ける。
「俺は何でしょうか」
真面目な顔で佐助くんも紙を広げた。
「課題——感情を豊かにせよ……?」
「ふふふっ」
あまりにピッタリ過ぎて
思わず笑ってしまった。
「お前のことを良くわかっているようだな」
頷く謙信様の横で、佐助くんは納得がいかないように首を傾げていた。
「謙信様は?」
「さあ俺に勝利をもたらせ」
訳のわからないことを言いながら
カサリと紙を広げる謙信様。
「争い事——売られたら喧嘩は買って吉。ほう…仕掛けるのはならぬが応じる戦は吉と言うことか」
「…物騒なこと書くなよな」
何だか皆ひと味違ったものを引いてる。
確かにそれぞれピッタリのものだけど。
さっき私と幸村が引いた時には、可愛らしい占いばかりだったのに。
「ねぇ、幸村のは何だろう?」
「あ?あぁ」
最後に幸村が取り出した紙を広げていく。
書いてあるものを読もうと口を開きかけた幸村が、それを声にする前にピタリと動きを止めた。
「どうしたの?」
「何て書いてあるんだ?」
私をはじめ、皆が気になって幸村を見つめる。
すると……
「あ、明日は晴れるってよ!」
「はぁ?」
紙を手の中にギュッと丸め込んだ幸村は
不自然な程に顔を赤くしてそう言った。
「おい、正直に言わねば斬るぞ」
疑ぐるような眼差しを向ける謙信様だったけれど
また信玄様が何かを察したように間に入る。
「そうか、明日は晴れか」
「わ、悪いけどこれは貰って行くからな!」
「え、幸村??」
お菓子を載せた盆ごと持った幸村が
そそくさと部屋から出て行く。
「…どうしたんだろう」
「余程悪いことが書いてあったんだろうか?」
様子のおかしい幸村を心配する私と佐助くんを他所に、信玄様はゆったりと笑っている。
「きっと、姫のものと同じようなことが書かれていたんだろうな」
「え?私のと同じって……」
自分の引いたものを思い出し
途端に頬が赤くなっていくのを感じた。
「あの…私も失礼しますっ!」
「ははは、わかりやすいなぁ」