第80章 白銀ノ月 ー6ー(石田三成)
お茶屋から帰った後、三成くんは仕事で数日留守にするとのことで、光秀さんと一緒に出掛けて行った。
私は信長様に金平糖を届けるため、その姿を探している。
天主に行ってみたけど返事が無かったし
広間にでも居るのかな?
やって来た広間の襖は閉まっていたけど、中に人の気配がある。
「信長様、いらっしゃいますか?」
「迦羅か?入れ」
「失礼します」
襖を開けると、そこには信長様と秀吉さん。
何だか難しい顔をしていて、空気がピリッとしていた。
「あの、頼まれていたものです」
「ああ、御苦労だった」
包みを渡そうと手を伸ばすと、クッと手首を掴まれる。
な、何??
「戦はどうなった?」
「い、戦?」
何の話かわからずにキョトンとする私を他所に、横から秀吉さんが心配そうな目を向ける。
「迦羅、辛いことがあるのなら話してみろ」
「はい?一体何の話ですか?」
この状況が飲み込めない私の様子に
信長様と秀吉さんは互いを見る。
「戦は…終わったようですね」
「ああ。長期戦になると予想していたが」
「あのー…戦って何なんですか?」
「貴様と家康と三成の三つ巴の戦のことだ」
うん?私と家康と三成くん…ってまさか…
ちょっとちょっとやめてよ!!
「何で勝手にそんな話をしてるんですかっ!?」
「何を怒っている?」
「まぁまぁ。丸く収まったのなら良いでしょう」
「何かあればすぐに言え。この俺がいつでも加勢してやる」
「は、はぁ」
当人の知らない所でどんな会話が繰り広げられていたかと思うと、何だか恐ろしい。
戦だなんて大袈裟な話にされてるし…。
心配してくれてたってことなのかな。
「あ!そうだ!」
信長様に言いたいことがあったんだ。
「今度、針子仲間の子が祝言を挙げるんです」
「その話は聞いている」
「ここを去ってしまう前に、皆でお祝いしてあげたいと思うんですけど…」
「祝いか。めでたいことだ、そうしてやろう」
「ありがとう御座います!」
快諾を貰い、皆揃ってと言うことで三成くんと光秀さんが戻り次第にお祝いをすることになった。
仲間がひとり居なくなってしまうのは寂しいけど、好きな人と一緒になるって、幸せなことだよね。
いつかは私も…そうなれるかな。