第80章 白銀ノ月 ー6ー(石田三成)
「こんにちはおじさん!」
「おや、また来たね」
「金平糖ありますか?」
また信長様に金平糖を買って来いと頼まれて、すっかり顔馴染みになってしまった菓子屋さんに足を運んでいた。
…あ…無い。
並べられた商品の中に、金平糖は無かった。
「今日は無いみたいですね」
信長様には残念だけど、仕方ない。
すると気落ちする私の前に、菓子屋のおじさんが見覚えのある包みを差し出した。
「ほら、取っておいたよ」
「うわぁ!ありがとう御座います!」
「ははっ、よっぽど好きなんだねぇ」
私じゃないんだけど…
コレがよっぽど好きな人が居るんですよね。
買った金平糖の包みを大事に抱え、城に向かって通りを歩いていると、商人たちに声を掛けて回る三成くんの姿を見つけた。
「あ、三成くん…」
離れた場所で思わず足が止まる。
相変わらず爽やかな笑顔で話を聞いている三成くん。
やっぱりこれが…本当の三成くんだよね?
時々私に見せるあの意地悪な顔は……
そんなことを思いながら視線の先にその姿を捕らえていると、話を終えてこちらに向き直った三成くんと目が合う。
あっ…。
驚いた様子の三成くんだったけど
ふっと微笑みを浮かべ、こちらに歩いて来る。
「迦羅様、お遣いですか?」
「うん。信長様の金平糖」
包みを持ち上げて見せると、またですかと三成くんは笑った。
昨日のこともあるし、何となく気恥ずかしい気持ちもあったけど、今度は私がちゃんと話をしたいと思った。
「あの、三成くん」
「迦羅様。少し休んで帰りませんか?」
「え?あ、うん」
私の気持ちを察したのか、そう言う三成くんに柔く手を引かれた。