第77章 白銀ノ月 ー3ー(石田三成)
その夜ー。
御殿の部屋で薬の調合をしていた。
急いで作るものなんか無いけど、何かに集中していないと駄目な気がしたから。
どのくらいそうしていたのかな。
結局は他所のことに集中していたみたいだ。
出来上がる薬は…迦羅が使いそうなものばかり。
よく手が荒れるって言うから
よく小さな切り傷も作るし
何をしたかわからない青あざも。
「女の子なのに……」
そう。
其れはただ何処にでも居る女の子だった。
少し気が強いしお節介だし、負けず嫌いで頑固なとこもあるし、悪く言えば面倒な子。
だけど、笑ったり泣いたり忙しくて
あの子の顔見てると、飽きないんだ。
面倒だなって思うけど…
どうにかしてあげたいっても思うんだ。
この間までは、何となく毎日あの子の視線を感じてた。
何なんだろうって思う事もあったよ。
でも俺の勝手な思い込みじゃなかったら
ほんのちょっとでも…
あの子が俺に、特別な気持ちを持ってくれてるんじゃないかって、そう期待していたんだ。
だけど今頃になってようやく
待ってるだけじゃ駄目だってこと、わかった気がする。
俺も人並みに、嫉妬するんだってこともね。
………………
調合を終え、ひとつ外の空気を吸おうと襖を開ける。
中庭の上に見た空は、無数の煌めく星が散らばっていた。
「明日も、晴れそう」
幾らか前を向いた気持ちが、そんな言葉として零れる。
見つめる遥か高い空で
ふたつの星が寄り添うように、光った。