第74章 月花の誘惑(石田三成/甘め)
ー夕刻ー
今後の安土の政策の話を詰めるため、政宗様の御殿には私と家康様、光秀様が集まっていました。
文机に広げた用紙に、いくつかの案をまとめて記していきます。
「大体はこんなもんだろう」
「そうですね、ではこれで信長様に報告を上げましょう」
皆が意見を出し合いまとめた報告書を仕舞っていると、不意に政宗様が話題を変えました。
「そう言えば三成、今日迦羅と何やってたんだ?」
「はい?」
「お前の仕事部屋から迦羅が出て来るのを見ただけだ」
「あ、そのことですか」
悪戯な笑みを浮かべた顔を見れば、何を言いたいかはわかりました。
「仕事を手伝って頂いたんですよ」
「ふーん。それだけか?」
「ええ、簡単なことでしたから」
「簡単なことなら、自分でやれば」
…おっと、絡んで来ましたね。
何故か面白くなさそうな家康様の顔。
ふっ、そうですか。家康様はやはり…。
「迦羅様が暇だとおっしゃっていましたので、すみません」
「別に、謝らなくていいけど」
顔を背ける家康様ですが、本当は面白くないと明らかに書いてありますよ。
「…何か面白いことになっているようだな」
「はい?何のことです?」
「いや、いい」
さすが光秀さん。
不穏な空気を察知したようですね。
薄ら笑う光秀さんと目が合えば、全てお見通しだと言わんばかりにその目に射抜かれた気がしますね。
…やはり恐ろしい人です。
「では、私は帰りますね」
「何だ三成、飯食っていかねーのか?」
「せっかくですが、まだ仕事がありますので」
「俺も御殿に戻ります」
そう言うと同時に家康様も立ち上がって、私たちは二人で政宗様の御殿を出ました。