第66章 天邪鬼な子守唄 −6−(徳川家康)
心の中で必死に叫んだその時—
ガラッと勢い良くボロボロの戸が開け放たれた。
「い、家康!!………じゃない…」
視線を向ければそこには、刀を手にした信長様。
瞬時に私に被さる男に斬りかかった。
その後ろから不機嫌そうに家康が現れる。
「家康っ!」
「迦羅…ごめん、遅くなって」
「ううん…私は平気だよ」
家康は私の頬をひと撫ですると
直ぐに男たちに向き直る。
男たちは一歩後退し、側にあった刀を手にした。
にじり寄る信長様と家康。
「俺の出番、横取りしないでもらえます?」
「何を怒っている。そう睨むな」
信長様と家康は一気に男たちに踏み込んで行く。
耳障りな悲鳴に、肩を竦めて顔を逸らしていると
「迦羅様、早く外に」
「あ…三成くん……」
現れた三成くんに連れられて
私はあばら屋の外へ出る。
丁寧に紐を解いてもらっていると、中から二人が出て来て、足元にあの男たちが放り投げられた。
「骨の無い奴らだった」
「し、死んでるの……?」
「いや、生きてるよ」
その男たちを三成くんが笑顔で縛り上げる。
「くそっ……」
「一思いに殺りゃいいだろ!!」
悪態を吐く男たちに
しゃがみ込んだ家康が声を掛けた。
「死ぬより酷い目に遭わせてあげる。迦羅に手を出した、罰だからね」
「この家康の拷問はそれは耐え難いものだ。いっそ殺してくれと思うだろうな」
「ひぃっ…!!」
脅かすように信長様が付け加えると
顔色を変えた男たちは情けない声を上げた。
「迦羅…本当に何とも無かった?」
「…うん。ありがとう」
両手で頬を包み込む家康は
すごく心配してくれていたのがわかる。
「ひとりにして、ごめん」
「…うん」
私たちは信長様と三成くんが居ることもそっちのけで、きつく抱き合った。
「貴様ら、いい加減にしろ」
「妬いてるんですか?」
「ふん、誰に妬くと言うのだ」
「……真っ先に乗り込んだくせに」
「俺は常に先陣を切るだけだ」
「ふふっ、信長様も三成くんも、ありがとうございました」
捕らえた男たちを連れ
助けに来てくれた三人と帰路につく。
余程面白くなかったのか、家康は私の後ろで、ずーっとぶつくさ言ってるけど。
でも、ありがとう。