第66章 天邪鬼な子守唄 −6−(徳川家康)
「只今戻りました。信長様、ご報告…」
「独断での行動は慎んだようだな」
「……はい」
言い終えないうちに被せられる言葉。
この人は、俺がひとりで行こうとしたこと、きっとわかってるんだ。
「で、迦羅は攫われたか」
「ええ、俺が目を離したばかりに…」
そう、俺のせいなんだ。
待ってろって、置いて行ったから。
「直ぐに救出に向かうぞ」
「しかし信長様、彼らの居場所がわかっていませんよ?」
「案ずるな三成。誰が連れ帰った奴らの口を割らせていると思っているのだ」
「はい?」
余裕の笑みを浮かべる信長様が広間の入り口へ目を向けると、飄々と涼やかな顔で、光秀さんが現れる。
「どうだ、光秀」
「西外れの森に奴らの隠れ家があるそうだ」
「流石ですね!光秀さん」
「口を割りたくなるよう仕向けたからな」
「………」
「何だ家康。迦羅が待っているのだろう?さっさと行って来い」
そうして俺と三成、信長様の三人で迦羅の救出へと向かう。
「焦るなよ家康。勘付かれては元も子もない」
「…わかってます」
「信長様までご一緒して下さるとは、これは心強いですね」
「ふん、腑抜けた悪党の顔を拝んでやるだけだ」
随分呑気だけど…
俺は迦羅が心配で仕方無いんだ。
今頃酷い目に遭わされてないか、すごく。
迦羅に何かあったら、俺……。