第65章 天邪鬼な子守唄 −5−(徳川家康)
チュチュン…
んんっ…もう朝?
でも、もう少しだけ……。
もぞもぞと寝返りをうとうとすると、動かした手が何かに当たった。
「いてっ…」
「え?」
思わず目を開けると、目の前には家康の顔。
「家康?何してるの?」
「…寝呆けてるわけ?見たらわかるでしょ」
うん、一緒に寝てるんだよね?一緒に。
いつもこうして二人で……
あれ、ここ私の部屋だよね。
…そっか、昨日家康を待ってて、そのままここで寝ちゃったんだ。
「家康までここで寝てくれたんだね」
「寝てるあんたを起こすのも悪いし、帰ってもひとりで寝なくちゃいけないし」
「そっか、ありがとう」
家康のこう言う優しさが、くすぐったい。
出会った頃は、あんなに素っ気なかったのに。
「でも、あんたも酷いよね」
「ん??」
「折角一緒に寝てあげたのに、まさか寝起きに殴られるなんて、思わなかった」
「あ、あれはっ…!」
「…ごめん、嘘」
悪戯するみたいに少しだけ笑う家康の顔。
優しい手つきで髪を梳かれているうちに
またまぶたが重くなってきちゃった……
「こら、二度寝しないの」
「だって……」
「今日は出掛けるんでしょ?」
「うん。でもまだ…早いよ…」
家康が側に居てくれると、何て言うのか、すごく心地良くって。
まるで子守唄でも聞こえてくるみたいに
心の中が…穏やかになって。
その心地良さに抗えなくなった私は、家康の胸に顔を埋めた。
「しょうがないから、もう少しだけ、こうしててあげる」
そう甘やかす声が聞こえて
私はまた夢の続きを見る為に、眠りに落ちていった。