第64章 天邪鬼な子守唄 −4−(徳川家康)
もうすっかり遅くなったけど
あの子、ちゃんと待っててくれてるかな…
会議、長引いちゃったから。
…って言うか政宗さんのせいだけど。
(家康、昼間の話じっくり聞かせてもらおうか)
(昼間の話?何のことだ政宗)
会議終わりに政宗さんが余計なこと言うから、信長様が食い付いちゃって…。
根掘り葉掘り迦羅とのこと、聞いてくるんだから。
本当、面倒くさい人たち。
「迦羅、入るよ?」
中から返事は無いけど、襖を開けてみればその姿はちゃんとあった。
布団の上にコロリと転がって丸くなって。
随分待たせちゃったから、疲れたかな。
「寝るならちゃんと布団入りなよ」
そう思って揺すってみたけど起きそうにも無い。
無理に起こすのも可哀想だし
このまま寝かせてあげようかな。
俺も少し…疲れたから。
迦羅の隣、布団の上に横になってみる。
仄かな迦羅の甘い匂いが鼻を掠めた。
「明日は、きっと晴れるよ」
そっと頭を撫でたら、ちょっとだけ微笑んで、また静かな寝息を立てる。
「おやすみ」
…………………………………。
迦羅の隣で淡い夢を見た。
小さな花がたくさん咲いてるあの野原。
それだけなのに、すごく綺麗な世界に見える。
俺、いつからこんな風になったんだろう?
隣り合って寝転がって、空を見上げて…
たったそれだけのことに、すごく、落ち着く。
俺だけ、ひと足先に見ちゃったね。
あんたは明日もこうやって
俺の隣で笑っててくれるかな。
夢の中で繋いだ手は
布団の上でも固く繋がれていたー。