第63章 天邪鬼な子守唄 −3−(徳川家康)
「最近調子いいみたいだな」
「はい?俺ですか?」
城の一室で共に仕事をしている秀吉さん。
文机に片肘を着きにこやかに俺を見ている。
「調子は、悪くないですけど」
「だろうな」
「…………」
何となく秀吉さんの言いたいことがわかった。
けど、こう言う時どんな顔していいかわかんないから、やめてくれないかな。
「秀吉、切り込み方が甘いんだよ」
横から口を出したのは…そりゃ政宗さんだよね。
爛々としている獲物を狩るような目。
正直、俺は少し政宗さんの目が苦手。
何処までもしつこく、目的のものを探り当てるまで光ってるから。
「つまりはアレだろ?」
「…一体何ですか?」
「調子がいい時は迦羅と上手く行ってんだよ。そうじゃ無い時はまぁ何かあった時だな!」
「どうでしょうね」
どうでもいいです、と言う意味を込めたつもりだけど、政宗さんには届いて無い。
グイッと俺の目の前まで顔を近付けて……
「死にそうなまでに暗い顔してる時は……抱くのを迦羅に拒まれた時だろ?」
「………やめてくれませんか」
政宗さんが入って来るとすぐこれだ…。
悪いけど、拒まれたことなんか無いから。
そして隣では秀吉さんも顔赤いし。
「しょうがねぇだろー、お前の顔にそう書いてあんだからよ」
「政宗、やめろ」
「そう言う秀吉さん、顔赤いですけど?」
「ば、馬鹿を言うんじゃないっ!」
「ははっ!何だ秀吉、お前も意外と好きなんだな?そう言うの」
「うるさいぞ政宗!」
この二人、結構相性ぴったりなのかも。
って言うかこんな俺の話なんかどうでもいいから。
「真面目に仕事しましょうよ」
「そうだな。家康には改めてじっくりとその辺を聞かせてもらうことにするか」
だから俺の話は改めてなくていいって。
話で中断された仕事を、俺たちはようやく再開した。
「失礼いたします」
そこへやって来たのは家臣のひとり。
「家康様。信長様より、広間へ来るようにとのことです」
「俺?…わかった」
「おい、お前何かやらかしたのか?」
「何もしてませんよ」