• テキストサイズ

【イケメン戦国】✿ 永遠の恋〜華〜 ✿

第60章 一夜の妖花(武田信玄/甘々)



「これからまだ仕事があるんだ。また夜に逢おう」

私を部屋まで送ってくれた信玄様は、そう告げると私に背を向ける。



「…信玄様っ」

「ん?どうしたのかな?」


私は咄嗟に信玄様の袖を掴んでいた。

何か言いたかった訳じゃないけど、少しだけ…離れるのが怖かったのかも知れない。



「いえ…お仕事、頑張って下さい」

「君にそんな顔をされると、抱き締めたくなってしまうだろう?」



いつも聞いている信玄様の甘い言葉ー。

いつもなら照れてばかりいる筈が、今は何故か…泣きたいくらいに胸に沁みる。



気が付いた時には、私は思い切り信玄様に抱き付いていた。


「どうした?今日は大胆じゃないか」

「信玄様…」


離れたくなくて、離したくなくて。
背中に回した手がギュッと着物を掴んでいた。


「迦羅。さっきのことなら、君は何も気にすることは無いんだ」

「……はい」

「君にこうされるのは嬉しいが、そんな悲しそうな顔は見たくないな」

落ち着かせるように頭を撫でる大きな手。


…そうだよね。
いつまでも甘えてばかり、いられないんだ。


「ごめんなさい。仕事に、行って下さい」

「ああ。夜に戻って来た時には、いつもの笑顔でいてくれるかな?」

「…はい」


心配を掛けないように、精一杯笑顔を作ってそう返事をしたの。

満足そうに笑った信玄様は
今度こそ背を向けて歩いて行った。






本当は胸の奥がモヤモヤしてる。

このままの私でいて良いのかな?
私がもっと…大人だったら……。




信玄様の後ろ姿が見えなくなったところで部屋に入った私は、座り込んで暫くそのままでいた。

ふと顔を向けた先には信玄様が贈ってくれた鏡台。



映っているのはもちろん私。

とても不安そうな顔をした、子供みたいな私ー。






/ 509ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp