第59章 戦国狂想曲3幕②(家康ルート)
御殿に戻って来て、迦羅に必要そうな薬を調合してる。
迦羅は大人しく座って
興味深そうに俺の手元を見てるんだ。
「症状は?咳だけ?」
「あ…少し喉も痛いかな」
「わかった。もうちょっと、待ってて」
…て言うか、何でそんなに嬉しそうな顔して見てるの?
風邪ひいて辛いんでしょ。
本当、変な子なんだから。
「家康って、お医者さんみたいだね」
「…そう」
「ねぇ家康、耳だけ…貸してくれるかな?」
「うん。いいけど」
…さらっと返事しちゃったけど、あれだよね。
こう言う時って、どんな顔してればいいんだろ。
「あのね、家康。昨日はありがとう」
「ありがとうって…何で?」
「私のこと好きだって言ってくれて。本当にすごく、嬉しかったの」
その続きが早く聞きたくて、視線を上げて迦羅を見た。
恥ずかしそうに頬を赤らめる顔を見たら
言いたいことが、何となくわかったんだ。
「俺に、するんでしょ?」
「…うん」
「そんなに俺のこと、好きなの?」
「うん。私は家康が好きなの」
「そう」
何だろう。
昨日あんたに気持ちを伝えた時よりも、今のほうが随分照れくさいんだ。
俺のほうこそ、ありがとうって言いたいくらいなのに…。ごめん。
「ほら、これ飲んで」
調合した薬を丁寧に白湯に溶いて、迦羅に手渡す。
一口含んだ迦羅が勢い良く噎せ始めた。
「ゲホッゲホッ!……っわぁ…」
慌てて側に行って、背中をさすってあげる。
すぐに落ち着いたみたいだけど…
「何してるの。ちゃんと飲んで」
「だって…すごく苦くって……」
「薬なんだから、苦いの当たり前でしょ」
「でも……うぅ…」
飲まなきゃ治らないけど、いいわけ?
そんな困ってる顔も、可愛いけど。
風邪で弱ってるあんたなんか、見たくない。
薬を手になかなか覚悟が決まらない迦羅に、俺はじれったい気持ちになって来た。