第58章 戦国狂想曲3幕①(政宗ルート)
「あのね、政宗にこれを…」
そう言って迦羅が、傍に有った風呂敷包みを解く。
この雨ん中大事そうに抱えて来たそれは俺にだったのか。
「夏生地で縫ったんだけど、絶対政宗に似合うと思うの」
「相変わらずいい出来だな」
広げて見るそれは、ほつれなんかひとつも無いだろう立派な仕上がりだった。
「着てみてもらえる?」
「おう、いいぜ」
立ち上がって帯を解くと、慌てたように迦羅がくるりと背を向けた。
「い、いきなり脱がないでよ…」
「減るもんじゃねーし、見てたっていいぜ?」
「見ないよっ!!」
初々しい反応してくれるぜ。
こんなことで照れてるようじゃ先が思いやられるな。
まぁ…教え甲斐が有るってもんか。
真新しい着物に袖を通すと、袖も裾も俺にぴったりと合った。
「ほら、どうだ?」
「うわぁ…やっぱり似合うね!」
「男前だからな、様になるだろ?」
「ふふっ。政宗ってば」
これだけ丁度良く仕立てるなんて、そう出来ることじゃない。
お前がどれだけ俺を良く見てるか
この着物が教えてくれてんだな。
「ありがとう。もう着替えていいよ」
また背を向ける迦羅に、俺はこれを脱ぐのが勿体無くなった。
いや、脱いでもいいが…
ただ脱ぐだけじゃつまんねーし。
そっと迦羅の背後に腰を下ろし、腹の前で手を組む。
「政宗?」
「なぁ迦羅。いいことしよーぜ」
「いいことって……」
「言わなくたって、わかんだろ?」
首筋に唇を押し当てれば、雨で冷えた肌がひんやりとしている。
雨粒のついた所をペロリと舐めると
華奢な肩が反応して跳ね上がった。
「んっ、だ、ダメだよ…政宗っ…!」
「何がどう駄目なのか言ってみろよ」
「だから…まだ、早いって…言うか」
「お前なぁ、好き合った男と女に早いも遅いもねぇだろーが」
両想いだと知って浮かれてんのは俺だけか?
お前は俺に抱かれたいと思わねぇのかよ?
「こっち向けよ」
「…………」
ガチガチになった迦羅は耳まで真っ赤にして、動かない。
成る程な。
緊張してるってわけか。
でもそれはお前だけじゃ無いってこと、何でわかんねーのかな。
俺だって、こんなに……