第58章 戦国狂想曲3幕①(政宗ルート)
サァァァァーー
「…ったく、本当に降りやがった」
土砂降りでは無いものの、昨日家康が嫌味に言った通りに雨になった。
開けたままにしてある自室の襖から
柔く降り注ぐ雨を眺めている。
今日は休みだからいいけどよ、大人しくしてるとするか。
文机で頬杖をつきながら、時間を持て余すようにただぼーっとする。
…迦羅の奴、ちゃんと考えてんだろうな?
昨日の返事をよ。
昨日の今日だ、何も焦ることはねぇが気になって仕方ねーんだよな。
やっぱあのまま、口付けしちまえば良かったな。
…駄目か。
あいつが目ぇ釣り上げて怒るのが想像出来る。
雨の音を聞きながら迦羅のことを考えていると、揺籠に揺られるかのように、次第に瞼が重くなってくるー。
……………………………………
ガタンッー
「…ん?」
戸の鳴るような音に目を覚ました。
どのくらい眠ってしまったのか、外は雨が打ち付け、風も強く吹いている。
開けたままの襖を閉める為にそこへ行くと
廊下の奥から足音が近付く。
「あ、政宗!」
「迦羅、どうしたんだ?」
こっちに来た迦羅を見れば、頭も肩も随分雨に濡れている。
「おいおい風邪引くだろーが!」
部屋の中に引っ張り込んで座らせ、持って来た手拭いでわしゃわしゃと頭を拭いてやる。
「ま、政宗…自分でするよ〜」
「お前ちゃんと傘さして来たのか?」
「さして来たけど、途中で風が強くなって…飛んで行っちゃったんだもん」
頭をされるがままの迦羅は、手拭いから覗かせた唇を尖らせた。
…まったく。
可愛いにも程があんだろーが。
「で、こんな雨の日にわざわざどうした?」
「それは…政宗に話があって…」
手拭いを動かす手が止まる。
話ってのは、きっと昨日の返事だよな?
こんな天気なのに、お前は俺の為に来たのか。
「あの、迷惑だったかな?」
「んな訳ねぇだろ。今日は城に行く予定も無かったしな、お前に逢えて嬉しいに決まってんだろ」
「そっか…良かった」