第57章 戦国狂想曲3幕(家康VS政宗/共通)
ドキドキ、ドキドキー
まだ治らない速すぎる鼓動のまま、台所を出た私は部屋に向かっていた。
さっきの政宗の顔が頭から離れない。
危なく、雰囲気に呑まれる所だった…。
グイッー!!
「っえ、わぁっ…!」
突然腕を掴まれて引っ張り込まれたのは書庫。
私の腕を掴んでいるのは、家康ー。
戸を閉めて振り向く家康の顔は、何だか不貞腐れているみたいで。
「な、な、何?」
「政宗さんと、何してたの」
「何って…話をしてただけだけど」
「ふーん」
怪しむように視線を向けられて
何となく居心地が悪くなる。
腕はまだ、家康に掴まれたまま。
「あのさ…昨日は、ごめん」
「あ、もういいよ。そのことは…」
「どうして?」
「良くわからないけど、心配してくれてたんでしょう?私のこと」
見つめる家康の頬が少しずつ赤くなっていくのがわかった。
何か言おうと口を開きかけた家康が、それを飲み込むように目を逸らす。
「家康?」
「…俺、心配だったんだ。あんたが……」
「うん?」
「他の男に、取られたと思って」
「え…」
視線を戻した家康の顔は、やっぱり少し赤くて…私にも伝染するみたいに頬が熱くなった。
腕を掴む手が僅かに力を込める。
「あんたは、政宗さんが好きなの?」
「ど、どうしてそんなこと」
「取られたくないから…。政宗さんにも」
どうしよう…
家康は私のこと好きって言ってくれてるの?
どう答えたら良いか迷ってしまって、じっと見つめる家康から顔を伏せた。
ーふわりと家康の纏う香りが私を包む。
「い、家康っ…!」
「逃げないでよ」
「…………」
手を添えた家康の胸の辺りからは、規則正しく、そして速まった鼓動が伝わる。
「迦羅…選ぶなら、俺にしなよ」
「…どうして」
「わかるでしょ。俺がこんなに、あんたのこと、好きだからだよ」
私の肩口に埋まる家康から漏れる吐息が、ほんの少し首筋に触れるだけで、真っ白になりそうなくらい…愛しくなる。
どのくらいそうして居たか。
ようやく身体を離した家康は、優しく私の頬を撫でると書庫の戸を開けた。
「返事、待ってるから」
家康が去り、開いたままの戸。
うるさく騒ぐ胸を手で押さえる私は
自分の曝け出すべき恋心を、改めて感じていた。