第57章 戦国狂想曲3幕(家康VS政宗/共通)
二日後ー。
「政宗さん、本当に行くんですか?」
「今更何言ってんだ。それとも、お前は迦羅から手ぇ引くか?」
「…冗談じゃないです」
「おい!迦羅が出て来たぞ!」
ヒソヒソ声で話す二人は
廊下の角に身を潜めていた。
風呂敷包みを手にした迦羅は部屋から出て、やがて俺たちの前を通り過ぎて行く。
ここ二日、特に動きは無かったが、どうやら今日は城下に行くらしい。
「よし、行くぞ家康」
「はいはい」
気付かれないように一定の距離を保ちながら、俺たちは迦羅の後をつける。
またあの男と会うつもりなのかも知れない。
その男がもし、迦羅のいい人とやらだったら。
そんな思いが、後をつけると言う良からぬ行為の申し訳無さを完全に払拭した。
「家康、お前もうちょっと自然にしろよ」
「政宗さんこそ、わかりやすいその鋭い目付き、どうにかなりませんか」
そんなことを言いながら迦羅に着いて行くと、辿り着いたのは一軒の立派な家。
「こんにちは」
「あら迦羅様、もう仕立てて下さったんですか?」
「はい。いつもご注文頂いてありがとう御座います」
「あらーやっぱり素敵な着物だわ!あ、中でお茶でもいかがですか?」
「すみません、まだ用事があって…」
「残念だわ、じゃあまた今度にしましょう。迦羅様、着物ありがとうね」
玄関先でのやり取りを終えた迦羅が外に出て来る。
此処は仕立てのお得意先だったようだ。
だが、まだ用事があると言う。
もしかしたら今度こそ…そんな思いで、二人は再び迦羅の後に続いた。
次に辿り着いたのは茶屋。
確か三成が見た時も茶屋に居たと言う。
迦羅は、外の縁台に座る男に声を掛けた。
この間見たのと同じ迦羅の笑顔。これはもう間違い無いだろう。
「…あいつだ」
「今日も、顔が見えませんね」
「だけどよ、あの後ろ姿だ。ただの町民って訳じゃなさそうだな」
「ええ。何処ぞの武士…って言う感じでも無さそうですけど」
相変わらず物陰に隠れた二人は、見せつけられる迦羅と男の仲睦まじい関係の行方を伺っていたー。