第57章 戦国狂想曲3幕(家康VS政宗/共通)
「お、迦羅。今帰って来たのか?」
「秀吉さん。うん、友達に会ってたから」
「友達…か」
「どうかしたの?」
「いや、何でもない。じゃあまたな」
…??変な秀吉さん。
さてと、私もひとつ残ってる仕立ての続きしようかな。
部屋へ戻った私は、縫いかけの着物を手に、作業を進めていった。
これは注文の品じゃなくて
ある人の為に仕立てている着物。
暑くなって来たし、丁度いいかなって。
立派に仕上げて、この着物と一緒に…私の気持ちも伝えられたらいいなって思う。
照れくさいし、もしかしたらダメかも知れないけど…想いを伝えることが大事だもんね。
愛しい気持ちが指先から針に伝わり
ひとつひとつ、丁寧に縫いあげていく。
「おーい迦羅帰ってるかー?」
「!?」
襖の向こうから政宗の声がして、私は慌てて着物と道具を奥に追いやった。
ガラッー。
「帰ってたんだな」
「もう…返事してから開けてよね」
「悪い悪い!ついな!」
「やっと、帰って来たんだ」
政宗の後ろから家康も顔を出した。
この二人で来るなんて珍しい組み合わせ…
「何か用だったの?」
「あ?いや、ちょっと様子を見に来ただけだ」
「うん?」
何だろな、この雰囲気。
何か言いたそうだけど、言いずらそうにしてる二人の顔。
「何か変わったことはねーか?」
「別に、何もないけど…」
「ほらあれだ、お前良く城下行くだろ?何か変わったことがあったらすぐ教えろよ」
「う、うん」
「慣れた城下だって、いつ何があるか…わかんないから」
「うん、わかった。何かあったら言うね」
何だかわからない沈黙が少しあって
それから二人は同時に腰を上げた。
「どーれ仕事に戻るか。な、家康」
「そうですね政宗さん。まだ仕事ありますから」
「うん、二人ともまたね」
……結局何だったの?
城下での変わったことって言われてもなぁ。
喧嘩があったとか?
変な噂が流れてるとか?
多分、そう言うことに気が付いたら知らせろってことなのかな。
様子のおかしい二人が気になりながらも、それ以上考えること無く、私は再び縫い物に取り掛かった。