第57章 戦国狂想曲3幕(家康VS政宗/共通)
三成にほだされて城下に来てみたけど、迦羅を探して歩くなんて、格好悪いよね。
気になることは確かだけど
あの子にだって、事情があるんだろうし。
それはまるで、自分にそう言い聞かせるような気持ちだった。
変に怪しまれないように、見回りを装い、城下を見て歩く。
大通りの端まで来て、ため息を吐いた。
「はぁ…やっぱり止めよう」
城へ戻ろうと踵を返すと、向こうからやって来る政宗さんが俺に気付いて片手を上げる。
…居たんだ、政宗さん。
「よう家康。何やってんだ?」
「多分、政宗さんと同じです」
「ははっ、そうか。で、迦羅は居たか?」
「見かけませんでしたね」
「俺もだ。仕方ねぇ、帰るか」
政宗さんて本当に、自分に素直な人なんだ。
何を隠そうとか、恥ずかしいとか、そんなのが無いから相手にするのが怖いんだ。迦羅のことも。
二人並んで通りを歩いて行くと
政宗さんが突然足を止めた。
「どうしたんです?」
「…迦羅の匂いがするな」
「は?」
匂いって…。政宗さん、犬じゃ無いんだから…
「ほらこっちだ!」
着物を引っ張られるままに着いて行くと、路地を抜けた所の川沿いに出た。
建物の陰に隠れるように、キョロキョロとする政宗さん。
「居やがったぜ」
「え?」
俺も政宗さんの陰から僅かに身を乗り出し、その視線を追い掛ける。
すると、こちらに背を向ける男と、それに向き合う迦羅が、何やら話しているのが確認出来た。
声までは聞こえて来ないけど
迦羅の顔を見れば、とても楽しそうにしているのがわかる。
「肝心な男の顔が見えねーな」
「こんな所で、何を話してるんでしょうね」
「この距離じゃ聞こえねーからな」
暫くその様子を見ていたけど、やがて迦羅は一礼して男の元を離れ、こちらに歩いて来た。
「まずいっ、隠れろ!」
政宗さんと一緒に、壁に背中を貼り付けるようにして息を殺す。
迦羅は俺たちに気付くことなく、建物の横を通り過ぎて行った。
慌てて先程の場所を見るけど
あの男は既に姿を消している。
「くそっ!正体が掴めなかったな」
「ええ、仕方無いですね」
俺と政宗さんは、モヤモヤした気持ちのまま、城へ戻ったー。