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【イケメン戦国】✿ 永遠の恋〜華〜 ✿

第6章 裏切りの雨(織田信長/悲甘)


宿の部屋へ戻ってからというもの、何から整理をつけたらいいかわからなくなっていた。
女中さんが食事を運んできてくれたが、とても喉を通る気がしない。


あれはきっとただの噂話じゃない。

それなら…私が今こうして此処におかれているのも納得できた。


この数日の間、信長様と…その妻になる姫様の話が進められているはず…。

だから、私を城においてはおけなかったんだ。

だから、秀吉さんも何も答えてはくれなかったんだ。


信長様が言う愛しているなんて言葉は
すべてが戯言だったんだー。

もう堪えきれないほどの傷みが全身を駆け巡って…苦しい。



開け放たれた縁の障子の向こうは
いつしか冷たい雨が降り注いでいる。

零れ落ちる涙もそのままに、私の心を濡らすような雨を眺めていると、部屋の外から声がかかる。

「迦羅さん、宜しいですか?」

宿の旦那さんの声だった。
すかさず涙を拭って返事をする。

旦那さんは盆に酒をのせてやってきた。
いつもの柔らかい笑顔で、少し申し訳なさそうに。

「此処にいらしてから、私共も迦羅さんに随分助けてもらっています。御礼に、少し呑みませんか?」

突然の訪問に少し戸惑ったけれど…
私もお世話になっている手前、断ることは出来なかった。

「ありがとうございます。少しだけ頂きます」

多少無理に笑い、何てことのない世間話をしながらお酒を頂いた。





すると次第に目の前が霞み始めたー。

「あ…あれ…」

向かいに座っている旦那さんが、それまでに見せたことのない不気味な笑みを口元に浮かべたのがわかった。


「可哀想になぁ。こんな所に放り出されるなんてねぇ」

この人…お酒に、何か…
伸ばされた手が私の髪に触れるー。


「…いゃっ!」

その手を払いのけるが目の前がぐらついて身体が言うことを聞かない。
どうしよう…怖いー

おぞましい視線から逃れ立ち上がろうとすると、勢いよく腕を掴まれて身体が揺れた。
そしてそのまま力任せに覆い被さってくる。

舐めるように私を見下ろす目が恐ろしくて堪らない…
身体の震えが止まらない…

抵抗する私を力ずくで押さえつけ、襟元を剥がす。乱れた着物の裾から、生温い手のひらが肌を這う。


「や、めて…っっ!」


恐怖でろくに声も出せない。

助けて…信長様ー


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