第56章 戦国狂想曲2幕②(光秀ルート)
秀吉の奴……。
迦羅のこととなると目の色を変えて来る。
あんな言葉に動揺を見せるとは、余程迦羅に惚れていると見る。
温い男と思っていたが
ふっ、意外に熱い男だったようだ。
だが悪いな。惚れた女をお前にくれてやる程、俺は甘くはない。
どれ。
迦羅は今頃どんな顔をしているのか。
愛を囁くなど冗談はともかく、今日のことは俺が素直に謝るべきだろう。
迦羅の部屋へ近付くと中から物音がする。
とうやら居てくれたようだ。
「迦羅、入るぞ」
襖を開け部屋へ踏み入れると、縫い物をしていた迦羅が顔を上げる。
「…普通、返事を聞いてから開けませんか?」
「何だ、嫌だったか?」
「……いえ」
とは言うものの、心底腑に落ちない顔をしているな。
まぁそう気にするな。
向かい側に腰を下ろすと
俺に構わず迦羅は縫い物を続ける。
そうあからさまに邪険にされたのでは、いくら俺でもこたえるぞ。
「迦羅」
「何ですか?」
「…………」
やはり顔を上げようとしない。
そう来るか…。お前のそんな頑固なところも、嫌いではないが。
「今日のことは俺が悪かった。謝ろう」
「…いいんです。あんなことになって、助けて貰ったのは私のせいですから」
「俺が謝っているのだ、素直に受け取れないのか?」
「いえ……すみません」
まったく。
今はお前を困らせたい訳ではない。
だがこの状況を何とかしないうちには、俺のもう一つの目的が果たせないと言うことだ。
「光秀様いらっしゃいますか?そろそろお時間ですが」
「ああ、今行く」
「では私は先に」
残念だが仕事がまだ有る。
お前との時間は、また後でゆっくりと楽しもう。
「お仕事なんでしょう?行って下さい」
「迦羅、俺の仕事が済んだら出掛けるぞ」
「どうして光秀さんと?」
「いいから言うことを聞け。後で迎えに来る。支度をしておけよ」
「…わかりました」
「それでいい。お前は素直なほうがいいからな」
迦羅、そんな顔をしているのも今のうちだ。
その顔を直さないのなら…
どうなるかわかっているな?