第55章 戦国狂想曲2幕①(秀吉ルート)
俺も日陰の外に出て、迦羅の隣へ並ぶ。
吹いて来る風が迦羅の長い髪を靡かせ、胸を締め付けるような甘やかな香りが漂った。
「俺に心配されるのは窮屈か?」
お前の心配も出来なくなるのかと思ったら
胸のあたりがチクチクと痛むんだ。
だが、俺はお前の嫌がることはしたくは無い。
「窮屈だとかそんなんじゃないの。秀吉さんが誰よりも優しいのは良くわかってるし」
「だったら何で…」
「だって甘えてばかりいたら子供みたいでしょ?私だってちゃんと出来るんだって言う所、秀吉さんに見せないと」
そう言って笑うお前の言いたいことは良くわかった。
でもそれじゃあ俺が辛いんだ。
いい歳して俺も我が儘だろ?
それこそ子供みたいだとお前に笑われたって構わない。
ーとその時、急に突風が吹き抜けた。
「きゃっ…!」
迦羅には向かい風になり、咄嗟に下を向いた迦羅だったが、目の辺りを気にしている。
「大丈夫か?」
「うー…目がゴロゴロする」
「ごみでも入ったんじゃないか?目開けられるか?」
ゆっくりと目を開けた迦羅は、心地の悪さからか目を擦ろうとした。
「駄目だ!傷付いたらどうする。ほら、ちょっと見せてみろ」
顔を寄せて下瞼を下げてみると、やっぱり小さな砂のようなものが着いていた。少しだけ指の腹で拭ってやると、何度か瞬きをした迦羅が笑顔になる。
「あ、治ったみたい。ありがとう秀…」
途中で言葉を切った迦羅は
そこで何かを思い出したように、口をへの字に曲げる。
「だからダメだよ!大人になるって言ったばかりなのに!」
その言葉は俺に向けてか自分に向けてかわからないが、どうやら悔しいらしい。
そんなお前が可愛らしくもあり
寂しいようにも思えた。
「離れて行かないでくれ」
「え?」
「お前がお前の言う大人になって、俺の手から離れて行ったら…もう追いつけないかも知れない」
「秀吉さん…?」
意識したのか自分でもわからないが
俺の手はいつの間にか迦羅の頬に添えられている。
今こうして目の前に居るお前が、いつか俺の助けを必要としなくなった時。
そんな時が来たら俺は…一体どうなってしまうのか。
考えるだけでもどうにかなってしまいそうだ。