第55章 戦国狂想曲2幕①(秀吉ルート)
…まったく。
光秀のやつ、油断も隙もありゃしない。
何が詫びるついでに愛の言葉を囁いてやるだ。
………そんなことさせてたまるか。
迦羅は俺の、俺の大事な…。
さっきのことを謝ろうと、広間での攻防を制した俺は迦羅の部屋までやって来た。
自分の非を認めないなんて男らしくないよな。
「迦羅、ちょっといいか?」
「何ですか」
「少し話をしたいんだ」
迦羅は居たようだが、部屋からは連れない返事が返って来る。
怒っている訳では無く、それは何処か気が沈んでいるような声ー。
もしかしたらこのまま門前払いかも知れないと思った時、サッと襖が開けられた。
俯く迦羅はやはり元気が無い。
…俺のせいで気を悪くしてるんだ。
そりゃそうだよな。
「なぁ迦羅。さっきは俺が悪…」
「ごめんなさい」
俺の言葉に被せるようにして迦羅が謝る。
「どうして謝るんだ」
「だって、やっぱり言うことを聞かない私のほうが悪いんだから…」
別に根に持っている訳では無い言い方。
俺に気を遣っているのか?
お前だって、俺のせいで傷付いたんだろう?
「お前は謝らなくていい。俺が謝りに来たんだ」
「でも…」
「いいか?俺がお前の話を聞いてやらなかったのは事実だ。だからお前はあんな危ない目に遭った。そうだろ?」
「………」
「悪いのは俺だ。本当に、悪かったよ」
「うん…」
本当に申し訳無いと思っている気持ちは伝わったようだが、迦羅の顔は未だ晴れない。
いくら謝ったところで
お前にそんな顔されてたんじゃ俺が持たないな。
それを何とかしてやりたくて、そしてまた迦羅ともっと話がしたくて、俺はある提案をした。
「なぁ、ちょっと出掛けないか?」
「出掛けるって…」
「今日は天気もいいし未だ陽が高い。少しくらいいいだろ?」
「でも外は危ないんでしょ」
「今度は俺がついてるんだぞ。安心しろ」
小さく頷く迦羅に、ほっと胸を撫で下ろした。
話なんか此処でだって出来るが…
良からぬ邪魔に入られたくないからな。