第54章 戦国狂想曲2幕(秀吉VS光秀/共通)
ー安土城広間にて。
先程光秀さんが逃したと思った男たちは、路地の奥に居た光秀さんの部下によって捕らえられていたそう。
「ひとまずは捕らえましたが、噂に寄ればまだ他にも悪事を働く奴等が居るようですね」
「暫くは城下の見回りを続けろ」
「承知しました」
その話が終わると、一番下手に座る私に秀吉さんが声を掛ける。
「ところで迦羅。昨日俺が言ったことは覚えているか?」
「はい」
「だったらどうして一人で出て行ったんだ」
「それは、どうしても今日…」
話し始める私の声を遮るように、今度は光秀さんが口を開く。
「俺も言ったはずだ。ああ言う輩がいる、大人しくしていろとな」
「だからそれはっ…」
「何かあってからじゃ遅いから言ってるんだぞ」
「大人しくしているなど簡単なことだろう。そんな事もわからない頭なのかお前は」
「わかってます!でもどうしてもー」
「まったく、本当に手のかかる」
…だから言おうとしてるんじゃないの。
人の話も聞かないで何が説教よ。
一方的に責め立てられる私の様子に、信長様が間に入った。
「貴様ら、迦羅の話も聞け」
ようやく口をつぐんだ二人に私の怒りは一気に込み上げるが、大きな声を出す気にもならなかった。
何だか、悲しくて。
「光秀さんには忠告を受けましたけど、着物の納品が今日の約束だったんです」
「何故言わない?」
「言ってるのに光秀さんが私の話を聞かなかっただけでしょう?」
「………」
「それなら俺に話してくれれば良かっただろう」
そう横から口を出す秀吉さん。
「秀吉さんに相談しようとしたら、急ぐと言って何も聞いてくれなかったじゃない」
「あの時か…」
「納品を遅らせるなり方法はあっただろう?」
「…じゃあ私の仕事はどうでもいいのね」
「迦羅、そうじゃない」
「話を聞かない自分の事は棚に上げて、私にいい加減な仕事をしろって言うの?」
「何もそう言ってるわけではない」
「納品の約束は今日だったの。だから行ったの。助けてもらったのは感謝しますけど、お二人がそう言うつもりなら今後一切心配なんかして頂かなくて結構ですっ!」
そう言い切った私は、二人の顔を見ることも無く広間を出た。
私が悪かったのはわかるけど…
でもあんまりだよ。