第54章 戦国狂想曲2幕(秀吉VS光秀/共通)
城下に出ると、昨日に引き続き市が開かれていて、人通りが多く賑やかだった。
納品先はこの大きな通り沿いだし、少し不安な気持ちもあるけど、大丈夫と言い聞かせながら通りを進む。
そして無事に納品を終え、あとは帰るだけだった。
人の波に歩調を合わせるようにして
周囲に気を配るように歩いた。
すると突然目の前を大きな人影が塞ぐ。
わっ…!!
危なくぶつかる手前で何とか踏み留まる。
「すみません」
その人を避けようと、私が右へ行けば同じほうへ。
私が左へ行けばまた同じほうへ。
まるで立ち塞がるようにするその人を見上げると……
「よう。また会ったな」
「あっ…昨日の…」
ニヤニヤと私を見下ろす男は、昨日悪態を吐いて来たあの男だった。
「急ぎますので」
相手にしたらいけないと思い、その身体を避けて通り過ぎようとしたけど、伸ばされた腕にしっかりと掴まれてしまう。
「離して下さい!」
「そう連れないこと言うなよ、昨日の借りもあるしよ」
「ちょっと…!離してってば!」
賑やかな周りの声と雑踏が私たちの声を消し、誰も気付く様子は無い。
強引に腕を引かれて、次第に人気の無い路地裏へと入っていく。
「お?どうしたその女は?」
「やっぱりお前は仕事が早ぇな」
路地の奥に居たのは、恐らくこの男の仲間。
人相の悪い、ニヤついた男二人。
「だいぶ気が強ぇが悪くねえだろ」
値踏みするように上から下まで這わせられる視線に吐き気すら感じた。
「遊ぼうぜ、お嬢ちゃん」
「結構ですっ!」
依然として腕を掴む手はキツく力を込められていて、簡単には振り解けそうにも無い。
何とか逃げようと試みるけど
男はニヤついているばかりで逃してはくれない。
「勇ましい女も嫌いじゃねえが、言うことを聞く女はもっと好きだぜ」
耳元に近付く吐息が酷く気持ち悪くって肩が竦む。
「やめて下さい!!」
「そういや今日は来ねえのか?正義の味方の秀吉さんはよ?」
「おいお前、秀吉だぁ?」
「だが今日はそうはいかねえぞ」
目の色を変えた男にグッと身体ごと押さえつけられ、また何処かへ連れて行かれそうになる。
「やめてってば!」
「うるせえ女だな」
「お、おいっ!後ろ!」
「ああ?何だよ」
男が振り返るとそこにはー。