第54章 戦国狂想曲2幕(秀吉VS光秀/共通)
城へ戻って来ると、ひと息つく間も無く秀吉さんが部屋へとやって来る。
向かい合わせで座る秀吉さんは、改めて怒っているのだろう厳しい目を私に向けていた。
「迦羅」
「はい…」
「俺が言いたいことはわかるな?」
「わかってます…けど」
「けどじゃない。危ない目に遭う所だったんだぞ」
何故あんなことをしたのか、秀吉さんの言いたいことなんか良くわかってるの。
自分でも危ないことをしたってわかってる。
だけど、男とか女とか…そんな理由であんな態度を取るなんて許せなかった。
そもそも悪いのは向こうなんだし。
でも…チラリと伺う秀吉さんの顔が
安堵の微笑みに変わった。
「良かったよ、お前に何もなくて」
「ごめんなさい」
「お前の正義感あるところも嫌いじゃないが、あんまりハラハラさせるなよ」
「はい…もうしません」
伸ばされた手に頭をポンと軽く撫でられる。
そんな秀吉さんの優しさに、怒られるよりもほんの少し心が痛む。
「残念なことだが、最近安土にもああ言う柄の悪い連中が多いんだ。城下に出る時は、ひとりで行くなよ」
「うん」
「お前に何かあったら俺は…」
私の目を見つめたまま、秀吉さんがそこで言葉を詰まらせる。
そしてまた伸ばされた手が、とても優しく頬を撫でた。
「あの…秀吉さん?」
「さて、俺は仕事に戻るからな」
「あ、うん」
秀吉さんが出て行った後で
撫でられた頭も頬も…
いつもと違う熱を持つような気がした。
(お前に何かあったら)
ううん。
秀吉さんは根っからの優しい人だもん。
あんなに心配するのは私がいつも何かしでかすからだし。
特別な意味なんか…無いよね。
でも、あんまり優しいと
勘違いしちゃうよ、秀吉さん…。