第52章 彩−irodori−(石田三成/甘々)
決して広くはない通りに、村人たちが開く露店。
元気な呼び込みの声
はしゃぐ子供たち
私たちのように手を繋ぎ、仲睦まじく歩く恋仲の男女。
そこに居るすべての人たちが、幸せそうに見えた。
そんなお祭りの雰囲気に浸りながら歩いていると、それまでと違うお囃子が始まる。
そうして向こうから現れたのは、綺麗な紅色の衣装を身に纏った女性たち。
恐らくはこの村の女性たちなんだと思う。
まだ十ばかりの女の子からおばあちゃんまで、お囃子に合わせて息もピッタリの舞を舞う。
「ほら、あれでしょう?」
「本当だね、私の作った衣装だよ!」
「お祭りに映えるいい衣装になりましたね」
「うん。素敵だね」
舞が披露される間、流れの止まった人垣。
繋がれた手から伝わる三成くんの体温を感じながら…鮮やかな紅色を目で追った。
舞が終わると再び人が流れ、私たちも村の中をぐるりと見て回る。
次第に深くなっていく夜の色。
一際辺りを照らす提灯の灯り。
ふと隣を見上げるといつもと変わらない三成くんの横顔。
「どうかしました?」
視線に気付いた三成くんと目が合う。
何だろう、この小さいけれど幸せな気持ち。
側に居ることも触れることも当たり前になって、こうして同じ景色を見るこのとにも慣れているはずなのに。
「すごく、幸せだなーって思ったの」
「私も同じことを考えていました」
「本当?」
「ええ。私は迦羅様と一緒だと、どんなものも美しく見えるのです」
「…嬉しい。私もだよ、三成くん」
「やはり人は、好き合うと似てくるのですね」
「ふふふっ、そうかも」
通じ合う心に、お互いの指がきつく絡まる。
これからもきっと、こんなひと時が幾重にも重なって…私たちは幸せでいるに違いない。
そんな甘い思いが胸に沁み込んだー。