第52章 彩−irodori−(石田三成/甘々)
「迦羅様、寒くありませんか?」
「ううん、ぽかぽかしてあったかいよ」
村を出る間際、昔から造られていると言う村の甘酒をご馳走になったからか、身体はすっかり温まっていた。
「私も心地良くて、眠ってしまいそうです」
「三成くんに先に眠られたら困るよ」
私はまだ上手く馬を扱いこなせないんだから。
…そう言いたかったんだけど。
「誘ってます?」
「誘ってません!」
「それは残念です…」
「三成くん…酔ってる?」
「ふふ、酔っていたら迦羅様が介抱して下さるんですか?」
「んー、馬の上では無理だよ」
「では戻るまでには酔いますから、是非介抱して下さいね」
お腹を抱く片腕がきつく締まり
甘えるように頬を擦り寄せる三成くん。
もしかして本当に酔ってるの?
「あら、返事がありませんよ?」
「わ、わかったからっ…」
「二言は聞きませんからね」
耳にかかる艶っぽい声と熱い吐息にドキドキしながら、また来た道を帰って行く。
ぽっかりと浮かぶ月。
夜だから目の前の景色は暗い色をしているけれど、たとえそうだとしても、何もかもが綺麗に見えるの。
それはきっと、同じだと言ってくれる三成くんと見ているからなんだよね。
「三成くん、今日はありがとう」
「…………」
「三成くん?」
「…………」
「ちょっとー!寝たらダメー!!」
完