第52章 彩−irodori−(石田三成/甘々)
それからあっと言う間に五日が過ぎたー。
結局予定より一日遅れで衣装の仕立てを終え、夕暮れも押し迫る頃にあの反物屋さんにそれを届けた帰り道だった。
手直しする箇所もなかったみたいだし、何とか間に合って良かった。
仕事をやり終えた充実感からか、多少夜更かしを続けた身体も不思議と軽い。
それにしても、どんなお祭りなんだろう。
小さな村だから、派手ではないけどって女将さんは言っていたけれど。
行ってみたいなぁ…。
城門へ近付くと、仕事を終えたのか政宗と秀吉さんが出て来た。
「お、迦羅。お前も飯食いに来るか?」
「え?政宗の所で?」
「ああ、今から俺も行くところなんだ」
「仕立てはもう終わったんだろ?」
「うん。じゃあお邪魔しようかな」
…そう言えば三成くんは一緒じゃないんだ。大体いつもいるんだけど。
後から来るのかな?
そう思いながらも口には出さず、政宗と秀吉さんの後を着いて行った。
ー政宗の御殿で夕餉を食べ始めても、三成くんはやって来なかった。
「今日は三成くん来ないの?」
「あいつなら公務で留守にしてるぞ」
「え?そうなの?」
「何だ聞いてないのか?帰りは夜更けか明日になるか…」
「そうなんだ。私もずっと仕事が忙しかったからね、気を遣って言わなかったのかも」
そっか、居ないんだ。
公務じゃ仕方ないけど…帰って来たらきっと疲れてるよね。
「何か三成と約束があるのか?」
「約束?ううん、特に何もないけど」
「へぇ、じゃああいつが一人で何か企んでるんだな」
「企むって…」
「急いで公務を片付けて何かお前とやる事があるとか何とかって……むぐぐっ!」
「え??」
言い終えない政宗の口を秀吉さんが強引に塞いだ。
「まぁ兎に角、そのうち帰って来るからな」
「う、うん」
何だかわからないけれど、やる事って何だろう?
私は何も聞いてないけれども。
でも、早く帰って来てくれたら嬉しいな。
昨日までは毎日部屋まで様子を見に来てくれていたし、久しぶりに三成くんとゆっくり話せる時間が待ち遠しいから。
「おい何だよ急に」
「お前が何でもかんでも喋るからだろう」
そんな二人のやり取りを聞きながら、楽しい夕餉の時は過ぎて行った。