第52章 彩−irodori−(石田三成/甘々)
「遅いぞ三成」
「あ、すみません遅刻してしまいました」
「…ていうか何その格好」
「はい?」
「お前でも上着を脱ぐことがあるんだな」
「ああ、今日は暑いですからね」
「そうか?」
会議に一足遅れてしまった私に、皆の視線が集まりました。
上着を脱いだだけなのですが…
何かおかしいでしょうか?
少し気になりますが、私が定位置に腰を下ろすと同時に凛とした信長様の声が広間に響き、皆の視線はそちらへと戻ります。
「各自報告を聞こう」
今日は各々の領地の情勢や年貢についてなど
定期的に行われる報告の為に集まっています。
特にこれと言った問題もあがらず、各地は平和なようでした。
これが何よりのことです。
無用な争い事など起こらずに、こうして穏やかな日が続くことが、何よりです。
ー夜。
仕事を終えた私は、また迦羅様の部屋を訪れました。
灯りが漏れていますから、まだ昼間の続きをしているのでしょう。
「迦羅様」
「あっ、三成くん?どうぞ」
昼間とは違い、元気な声が聞こえて来ました。
襖を開けて中に入れば、迦羅様はやはり縫い物をしています。
「三成くん、来てくれてたんだね」
「勝手に入ってしまい、すみません」
「あ、いいのいいの!でも転がって寝ているとこ、見られちゃったね」
恥ずかしそうに笑う迦羅様ですが、眠っている姿もとても可愛らしいものでしたよ。
…とは口には出せませんが、本当です。
「何か急ぎのものなのですか?」
こんなに根を詰めて作らなくてはならない着物なんでしょう?
「近くの村でお祭りに使う衣装なんだって。あまり時間がなくって、お手伝いしているの」
「へぇ、お祭りの衣装とは…」
「何だか楽しくてつい夜通ししちゃって」
「あまり良い事ではありませんよ?仕事も大事ですが、まずは身体を大切にして下さい」
「うん…ありがとう」
「私も手伝いましょうか?」
「えっっ!?…だ、だだだ大丈夫!」
何故そんなに驚くのです?
一人より二人のほうが早いじゃありませんか。
「三成くんも仕事で疲れてるんだから!気持ちだけで嬉しいよ!」
そうですか?少し残念ですが
丁重にお断りされたので仕方がありませんね…。