第52章 彩−irodori−(石田三成/甘々)
昨日から迦羅様はお部屋に篭られているようですが…どうしたのでしょうか。
体調を崩された訳ではないと良いのですが。
心配する気持ちが先走り、いつの間にか迦羅様の部屋へと向かっていました。
「迦羅様?」
「………」
「居ないのですか?」
「………」
何処かへ出掛けているのでしょうか。
でも、物音ひとつしない部屋の中が気になりました。
居ないのであればそれで良いのです。
しかし、万が一にも倒れていたりしたら…
女性の部屋を無断で開けるのは気が引けますが、何かあっては困るのです。
仕方の無いことだと言い聞かせるように、思い切って襖を開けてみました。
「ーー迦羅様っ!?」
畳に転がるようにして横たわっている姿が目に入り、途端に血の気が引いていくような感覚に襲われました。
慌てて駆け寄り、その身体を揺すってみると、僅かに眉を寄せた迦羅様が小さく声を出します。
「う……ん…」
「大丈夫ですか?迦羅様??」
「すー…すー……」
あら?
これはもしかして、寝ています?
穏やかな寝息を立てていることに気が付き、急に肩に入っていた変な力が抜けてしまいました…。
本当に良かった。
傍には縫いかけてある着物や裁縫道具がそのままになっていて、こんな格好で寝ている理由がすぐにわかりますね。
「こうして一所懸命なところも、好きなんですよ」
丸くなって眠る迦羅様がとても愛おしく、聞いてはいないけど、そう言いたくなりました。
このまま側に居て、目覚めた顔を見たいところですが、この後に会議があるんです。
名残惜しいですが…
一旦戻りますね、迦羅様。
「…どうして起こしてくれなかったの!って怒るでしょうか?」
うーん、と悩んでみるものの
気持ち良さそうに眠っている所を起こしたくはありません。
そっと頭を撫で、脱いだ上着を掛けてあげました。
季節柄寒い訳ではありませんが
こういうの、少し憧れていたんですよね。
まるで一緒に寝ているようでしょう?
ですから私の代わりに、此処に置いて行きますね。
起こさないようにゆっくりと立ち上がり
静かにそーっと、部屋を出ました。