第52章 彩−irodori−(石田三成/甘々)
翌日も気持ちの良いお天気が続いている。
針子部屋でのひと仕事を終えた私は、次の仕立てに足りなくなっていた生地を買う為いつもの反物屋へと向かった。
「あら迦羅様、いらっしゃい」
「こんにちは」
馴染みの女将さんに出迎えられ、色とりどりの反物を見ていく。
すると…
「迦羅様、仕立てのほうは忙しいですか?」
「お陰様で。でも、一区切りついた所なんですよ」
「そうですか…」
何だか言いたそうにしているけれど、気を遣っているのか、女将さんは口ごもる。
「あの、何かありました?」
「いえね、すぐ近くの村から祭り衣装の注文が入ったんですけどね、今は人手が足りなくて…」
控え目に訳を話す女将さん。
なるほどね、そう言うことだったの。
次の注文の納期はまだ先だし、祭り衣装なんて興味あるかも。
「私で良ければお手伝いしましょうか?」
「本当にいいのかい!?」
パッと目を輝かせた女将さんは、わたわたと奥から生地や糸や装飾品を持って来て一纏めに風呂敷に包んだ。
そして見本となる絵図を一枚、私に差し出す。
きちんと寸法も書き記されていた。
「これは何着必要なんですか?」
「申し訳ないんだけど二着程お願いできるかい?祭りは七日後なんだよ」
「はい、わかりました!」
予定外だったけれど、お祭りのお手伝いが出来ると思うと、手元に舞い込んだ仕事にわくわくするしかなかった。
そうして仕入れた反物と、受け取った風呂敷包みを持って、急ぎ足で城へと帰った。
自室へ戻り、すぐに頼まれた衣装の仕立てに入る。
着物自体はシンプルな作りなんだけれど、装飾品を縫い付けたりするのに少し時間が掛かりそうかも…。
七日後にお祭りってことは、前日には村に届けなきゃならないよね。
でも手直しがあるといけないから…
よし!五日で全部終わらせよう!
見本の絵図を見ながら、丁寧に生地に針を通していく。
私の作るこの衣装がお祭りに華を添えると思うと、陽が暮れて、夜が更けていくのもすっかり忘れてしまっていた。