第51章 情恋歌(明智光秀/裏甘)
「それで、その件はどうなった?」
「やはり指揮を執っていたのはあの大名でした」
「貴様、どうするつもりだ」
「俺の領地内のこと、責任を持って片付けましょう」
先日より、俺の領地で御館様に対する謀反を企てる噂が聞こえていた。
数日の間に真偽を探ったが、やはりただの噂では無いようだ。
まだ謀反に転ずる準備すら整わぬ状況だが
此処で野放しにしておく訳にはいなかい。
早々に芽を摘んでおくことにした。
「では今回のこと、貴様に任せよう」
「はい」
「光秀。ひとりでは行かせないぞ」
「何だ秀吉、何か疑っているのか?」
「そうじゃない。お前には、仲間がいるって言う自覚が足りないんだ」
「…仲間、か」
「ああ、わかったな」
秀吉とは実に熱い男だ。
今回ばかりは、この男を無下には出来んか。
「どうせ直ぐに動くんだろ?話を聞こう」
「光秀さん」
秀吉と共に広間を出ると、奥から迦羅が姿を現す。
「どうした?」
「気を付けて…行って来て下さいね」
…何も聞かずにこの身を案ずるか。
詮索するなと言ったことを、恐らく胸に留めているのだろうな。
その顔を見れば心配していることはわかる。
「お前は聞き分けのいい子だな」
「待っていますね」
「ああ、少しの間だ。終われば直ぐに帰って来よう」
頬に触れると、返事の代わりに花のような笑みが見えた。
頬に置いた手を引く瞬間ー
迦羅の小さな手がそれを包んだ。
「私は、光秀さんのことが……」
「知っている」
「え」
「俺も、お前と同じだと教えておこう」
「…はい」
迦羅から手を離し、秀吉と共にその場を後にする。
見送られることも
出迎えられることも
お前であれば、悪いものではないのかもしれないな…。
「いつの間にそう言うことになってるんだ?」
「野暮なことを聞くな」
「ま、迦羅が幸せならそれでいいが。大丈夫なんだろうな?」
「世話焼きはやめろ」