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【イケメン戦国】✿ 永遠の恋〜華〜 ✿

第51章 情恋歌(明智光秀/裏甘)


「光秀さん、入ってもいいですか?」

「ああ」



襖の向こうから掛かるのは迦羅の声。
控え目に襖を開け、一冊の書物を持ってやって来た。


昨日逢ったのは夜更けだったが、こうして陽の光の中で見るお前は本当に愛らしいものだ。

「ここへ座れ」

自分の居た文机の前を空け
迦羅をそこへ座らせる。


「少しは読めるようになったのか?」

「はい、本当に少しですけど…」


俺が与えた書物、この数日でどれ程捲ったのか。
俺の居ない間にも、お前はずっとひとりで繰り返し読んでいたんだな。



「何処まで読んだ?」

「えーっと、ここまでは読みました」

「ではその先からだ」

「はい!」


いつかのように俺と迦羅は肩を並べ、開いた書物の文字を追って読んでいく。

時折触れる肩や腕に
その顔が淡く色付くのを見ながらー。











俺の声を追う迦羅の声が次第に小さくなり、疲れたのだろうと一旦文字を這わせる手を止めた。

「この辺りで少し休憩するか」

「………」

「迦羅?」



覗き込むその横顔はすでに目を閉じ、微睡みの中へ落ちていた。

伏せられた長い睫毛が、妙に胸を騒つかせる。

威勢の良い小娘とばかり思っていたはずが…俺の中に、もうひとりのお前が入り込んでしまったようだ。


「手のかかることには、変わりないがな」


片方の腕で不安定な迦羅の頭を抱き寄せ、肩を貸す。
鼻をくすぐる甘やかな香りが、俺までをも微睡みに誘うようだった。



「…みつ…ひでさん」

「…何だ」

「ずっと…一緒に……」


お前は、こんな俺と共に居たいと言うのか?

すべてを明かす事も無く、お前をひとりにするようなこの俺と。



寝言だとわかっているはずが
迦羅の言葉がひどく愛しいものに思えた。

素直に応えてやらなければならない。
…そんな気がして。



「ああ。ずっと、お前と共に居よう…」



明日がどうなるとも知れない世だと言うのに

俺もお前と、こうして居る事を願ってしまったようだ…。


「迦羅…」

傍に感じる体温に誘われて、重くなった瞼を閉じた。








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