第50章 三色の秘薬(家康・光秀・佐助/微甘)
ー佐助の場合ー
家康の御殿から戻り、自室で薊の花を一輪挿しに飾り終えた私は、ふうっとひと息ついたところだった。
光秀さんの所へお遣いに行って、家康と薬草を採りに行って来ただけなのに。
何だかものすごく疲れた気がする。
「はぁぁ……」
溜め息と共に机に突っ伏してみると
さっきまでのことが頭の中をぐるぐると巡った。
…光秀さん、すごく似合ってたな。
落ち着いた大人の雰囲気って言うのかな?
妙に誘われるような色気があって。
…それに家康も。
有ってもなくても変わらないって言ってたけど、十分変わるよ。
本人には自覚がないのかもしれないけど。
いや、ただの眼鏡って言われればそうなんだけど。
何かこう…気になっちゃうんだよね。
この時代の眼鏡男子、破壊力抜群かも・・・。
「はあー……」
「迦羅さん?」
「ん?あれ、佐助くん?」
返事をすると、カタリと天井板が外れる音がし、軽やかに佐助くんが降りて来る。
「やあ迦羅さん。随分大きな溜め息だったよ」
「…また眼鏡…」
「え?」
「あ、ううん!何でもないよ!」
そう言えばあんまり気にしたことなかったけど、佐助くんも眼鏡なんだよね。
今日はやけにときめいちゃったから、もうそれしか目に入って来ないよ…。
「もしかして、俺の眼鏡が気に入らない?」
「えぇっ!?ち、違うよ!」
「なら良かった。でもね、これがないと何も見えないんだ」
「佐助くんってそんなに目が悪いの?」
「この間も幸村に悪戯されてね、眼鏡を外していたら、謙信様かと思って柱に話しかけていたんだ」
「ふふふっ、何それ」
「それに眼鏡がないと、迦羅さんを良く見ることも出来ないからね」
「えっ?」
心なしか、眼鏡の奥が光った気がした。
こうして見ると佐助くんも本当に眼鏡が良く似合ってるんだよね。
外した所を見たことがないんだけど、生粋のインテリ眼鏡って言うの?
確か…宇宙物理学だっけ?
大学院生だったんだもんね。
うーん、やっぱりいいなぁ…。
って違う違う。